棚栽培のシャルドネ
ヴィラデストでたった1枚だけある棚栽培のシャルドネ。お客様の元には、主に「プリマベーラシャルドネ」の一部として届いています。
我々が通常行なっている垣根式栽培とは違い、雨や湿気の多い日本で高品質のブドウを栽培するための方法です。
この畑は数年前まで所謂「自然枝剪定」と言われる、棚面の隙間を埋める様に方々に枝が伸びる方法で栽培されていました。これは農家の経験や勘に左右される難しい栽培です。これを「一文字短梢」と言われる、管理が容易でブドウの品質安定化に繋がる樹形へと矯正をかけ、今年の剪定で、やっとある程度の形が完成しました。
この畑の様に、先人の方々から引き継いだ畑での作業というのはいつでも気が引き締まります。その土地で生活をし、世代を超えて農業を営んでいる農家さんという存在は、私たちの様な駆け出し栽培者にとっては、生ける分厚い栽培辞典の様な存在です。
新しい畑を開墾するときには、出来るだけ通りがかりの農家さんと世間話をする様にしています。人によってはサボりと取るかもしれませんが、農業を営む者にとってはこれがある意味全てかなと。自分で調べたら何シーズンもかかるような、天候、生育、季節条件、病気、虫害、獣害等、全ての情報が、通りがかりの近所のおじちゃんの頭と身体に入っているのです。
私は東京で生まれ育ちましたが、小学校低学年くらいまでは、近所でじいちゃんばあちゃんが農業をしていて、野菜も果物もスーパーで買うだけの物では無く、畑に行って採ってくる物でした。祖父の家に行くと、自転車で畑に枝豆を採りに行ってくれたのをよく覚えています。今では随分世の中も変わり、畑だったところはほとんど分譲住宅になって、当時の面影は全くありません。
植物の育て方は、最初から机に座って難しい本を読むのでは無く、じいちゃんばあちゃんと畑に行って学ぶという方が自然だと思うのです。もちろんワインブドウは難しい本も沢山読まないといけないですけどね。(庸)