醸造家のワイナリー通信

ブドウの開花 ~“リアルな体験”の価値~

長野県も梅雨入りし、畑ではブドウが開花を迎えようとしています。この時期、ブドウの新梢はもっとも旺盛に伸び、雑草もみるみる伸びてきます。ブドウは開花からほぼ100日で収穫を迎えるのですが、これから3か月余りの畑の管理、そして天候が、その年のワインの質を左右します。ワイナリーのスタッフは既に真っ黒に日焼けして、元気に畑仕事に励んでいます。昨年の台風被害、今般の新型コロナウイルス感染症拡大と、辛い状況が続きますが、2020年は特によいヴィンテージを期待したいものです。

私の働き方に関しては、このところオンラインでの会議やミーティングが増えてきました。移動がなくて時間を有効に使えるので、これは新型コロナウイルスが収束したあとも残ってほしいことです。
また、先日は「オンラインワイナリーツアー」についての打ち合わせをオンラインで行いました。ワイナリーツアーの参加者には事前にワインを自宅までお送りして、私がワイナリーを案内する様子を各々自宅で画面越しに見ながら、ヴィラデストのワインを楽しんでいただくというものです。このように、これからはイベントも多様化していくのではないでしょうか。

新しい技術の利点は充分に活かして効率化したいものですが、一方では、効率化によって自由になる時間を利用して、“リアルな体験”をすることの価値も見直されるのではないかと思います。
私たちヴィラデストワイナリーも、美しい景色を眺めながらおいしい料理とワインを楽しんでいただける、また、非日常的で心からリラックスできる、オンラインだけでなく“わざわざ時間をかけて行く価値のある場所”であり続けられるよう、努力をしていきたいと考えています。

御堂地区での植え付けが完了しました!

新型コロナウイルスの拡がりを受け、ヴィラデストワイナリーはゴールデンウィークを含む2週間、カフェとショップを臨時休業しました。

臨時休業中には、ワイナリースタッフに加えて、カフェやショップのスタッフ、そして村山シェフも一緒に、御堂(みどう)地区の広大な新畑で約3,000本のブドウ苗木の植え付けを行いました。カフェやショップのスタッフにとっては、普段とは違う屋外での力仕事ですが、汗まみれ、泥まみれになって、みんな頑張りました!

この御堂地区の畑は、未来に向けて、ヴィラデストの新しい可能性を拓く畑になることでしょう。

そして、今年のブドウの樹の萌芽は、暖冬の影響で早くなるかと思われていたのですが、4月が低温だったこともあり、ほぼ例年通りの5月初旬になりました。萌芽したかと思えば、あっという間に新梢が伸び、雑草もどんどん伸びてきますので、畑仕事については、とくにコロナの影響もなく、例年と同様に忙しくなってきました。

 

ただ、今日は雨ということもあり、ワイナリースタッフは屋内で、2019年のシャルドネをビン詰めしています。昨年は夏が雨がちで心配しましたが、9月は一転して晴れて、昼夜の寒暖差が大きい、絶好の気象条件が続きました。そのため糖度が充分に上がり、かつ酸味もしっかり保持された、すばらしいブドウを収穫できました。2010年代でベスト3には入る、グッドヴィンテージといえるワインに仕上がりつつあります。2019年ヴィンテージのリリースは今年の初夏以降になりそうですが、ぜひご期待ください!

 

皆さん、しばらくは我慢を強いられる生活が続くと思いますが、ヴィラデストのワインを飲んで少しでも晴れやかな気持ちになっていただければ嬉しいです。

 

 

※ 別の日にビン詰めの様子を撮影した動画です。よろしければご覧ください。

ヴィラデストワイナリーYouTubeチャンネル より

 

ヴィラデスト初の貴腐ワイン ~誕生の裏話~

本日、ヴィラデスト初の貴腐ワイン < KIFU-CHARDONNAY 2018 > がリリースとなりました。

2018年は春から暖かく、夏は記録的な猛暑で、ブドウの成熟が例年よりかなり早く進みました。例年だと、シャルドネは9月末から10月中旬にかけて収穫します。しかし、この年は9月の頭で既にブドウの糖度がかなり上がっていて、2週間後ぐらいには収穫しなければならないという状態になっていました。収穫の順番としては、シャルドネよりも早生のピノ・グリやゲヴュルツトラミネール、ソーヴィニョンブランといった品種の収穫を先に進めていたのですが、シャルドネの収穫までの間、9月はとても雨の日が多く、裂果や病気の発生リスクが高まっていました。
そのような中、シャルドネの一部に灰色カビ病(botrytis cinerea)の発生が見られました。このbotrytis cinereaの拡がりは非常に速く、ほんの数日の間に畑のいたるところにどんどん拡大していきました。これまでせっかく順調に熟してきただけに、暗澹たる気持ちで30分くらい畑を呆然と歩きまわっていました。しかし、よく考えてみれば、ブドウが熟した状態で、うまくbotrytis cinereaがつけば、いわゆる「貴腐ブドウ」になるわけで。そして、気持ちを切り替え、9月末に健全なシャルドネのみを収穫して <ヴィニュロンズリザーブ> 用とし、botrytis cinereaのついたブドウは樹に残したまま、11月まで放置することにしました。

そんなある日、世界的な醸造資材メーカーの社長や技術部門の責任者などがヴィラデストを訪れる機会がありました。そして、貴腐ブドウをみてもらったところ、「これはいい感じで貴腐ブドウになっている」と言われました。さらに、「この酵母を使え」、「プロトコールを送ってやる」と非常に親切(商売上手?)に助言をしてくれて、彼らの帰国後にもメールなどでやりとりをしながら、貴腐ワインづくりを進めることができました。私自身、初めての貴腐ワインづくりだったのですが、まっとうな貴腐ワインに仕上がったと自負しています。

11月までブドウを樹につけておくことで、半分干しブドウのようになり、糖度はもとの状態の約2倍、40度以上になります。また、botrytis cinerea以外の病気にかかっているブドウもありますから、いったん収穫したブドウを再度、ワイナリーでスタッフがほぼ一日かけて選別をしました。このようにしてつくられる貴腐ワインは、普通のワインと比べると、同じ量のワインをつくるのに3倍から4倍のブドウが必要になります。

ヴィラデストの < KIFU-CHARDONNAY 2018 > は、色合いは濃い黄色で、はちみつや白い花、ドライフルーツを思わせる香りが広がります。粘性のある極甘口ですが、同時に酸味もありますので、バランスの良い味わいです。デザートワインとして、よく冷やしてチビチビと飲むのもよいですし、ブルーチーズや甘いものとあわせても最高です。

今年は自宅で過ごすGWですが、大切な人への贈り物に、ご自宅での“プチぜいたく”に、ぜひご活用ください!

https://villadest.shop-pro.jp/?pid=150542142

誘引作業が完了しました

ブドウ畑では、結果母枝(けっかぼし=今年の種枝)の誘引作業が終わりました。今年の冬は暖冬でしたが、3月になって雪が何度か降りました。4月は暖かくなったり寒くなったりで、芽吹きは例年より若干早く、連休前くらいになるかと予想しています。

畑にいると、世界が混乱の中にあることが嘘のような、のどかな春の風景です。改めて、普通にワインを飲んで食事をし、親しい人と楽しく過ごす時間のありがたさを感じます。各自が対策をしっかりとることで、一刻も早い収束を祈るばかりです。


現在、新しいブドウ畑の植栽も進めています。ワイナリーの周りに1000本弱、御堂の畑に約3000本。かなりの数なので、1か月程度かかりそうですが、未来に向けて、気合を入れて!植え付けます!

 

昨日は、まとまった雪が降りました

この冬はほとんど雪が降らなかったのですが、ここにきてまとまった量の積雪になりました。
でも、やはり春の雪です。今日は晴れて気温が上がり、どんどん溶けています。

今年の春は、東御市・御堂(みどう)地区の残り半分(約1.5 ha)にブドウを植え付ける以外に、ワイナリー周辺に残された最後と言っていい土地に、シャルドネを植え付けます。これでヴィラデストワイナリーがある丘の上は、ほぼブドウ畑で覆われることになります。この写真の位置に来ると壮観で、ワイナリー開設当時の風景と全く変わったなぁと、感慨深くなります。

 

そのワイナリー周辺で植え付けをする、新しい畑のブドウの成長を見守り、時には作業に参加し、そして5年後にはその畑からできたワインをお届けする「ヴィニュロン会員2020」の募集を開始しています!これから3月、4月にかけて畑の整備、苗木の植え付けを行います。

https://www.villadest.com/news/Vignerons2020/

 

剪定作業が順調に進んでいます

今年は暖冬で、ほとんど雪が積もることもなく、剪定が順調に進んでいます。

この辺りは、例年、雪は少ないものの寒く、作業する人にとってもブドウにとっても厳しい条件ですので、少し寒さが和らぐ2月初めぐらいから剪定を始め、3月上旬に終了すれば上出来と考えているのですが、今年はそれを上回るペースです。2月は日本ワイン関係のイベントが多数開催されていますので、私はワイナリーを留守にすることも多いのですが、畑ではスタッフが着々と仕事を進めています。

剪定で樹形を保つことにより、その年の収穫量や樹勢を調整し、そして樹が健康に保たれます。ブドウの作業の中でも、最も技術や経験が必要な仕事と言えますが、前年の剪定がどのように樹の生育に影響を与えたのか、また、数年後の樹形を想像しながらする作業はパズルを解くようで、とても面白い作業ともいえます。また冬の静けさの中で、黙々と作業をしていると、気持ちも落ち着いてきます。ただし、天気の悪い日はとても寒いのですが。

 

異常に暖かい冬になっていますが、これから始まるシーズンが天候に恵まれ、そして笑顔で収穫を迎えられるようにしたいものです。

 

メーカーズディナーを開催しました

124日(金)、昨年オープンした「ワイン&ビアミュージアム(湯楽里館2階)」にて、ヴィラデストメーカーズディナーを開催しました。

現在、ヴィラデストカフェ、ショップは冬季休業中なのですが、ヴィラデストカフェの村山シェフによる料理とヴィラデストのワインを楽しめるとあって、ヴィラデストのご近所以外に、東京や千葉など、県外からもご参加いただき、楽しい会になりました。

今回、ワイン&ビアミュージアム初のメーカーズディナー開催でしたので、手探りではありましたが、せっかく湯楽里館の2階ですので、もう少し時間に余裕をもって、温泉にも入っていいただければ、もっとよかったかなと思います。

 

冬はワイナリーにとっては比較的余裕がある時期ですので、週末を中心にイベントや勉強会が続きます。この時期に、普段得られない経験や知識を得たり、人に会ったりなどして、様々なことを吸収したいと思います。

以下、2月に小西やスタッフが参加するイベントです。

どこかで皆さんにお会いできることを楽しみにしています!

 

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★ 2月1日(土)、11日(火祝)、15日(土)

  しなの鉄道 観光列車「ろくもん」にて【ヴィラデストワイナリー号】運行

★ 29日(日) NAGANO WINE FES in 東京 (@帝国ホテル)

★ 215日(土) 日本ワイン  ピノ・ノワール サミット (@台東館)

★ 223日(日) 東御ワインフェスタ in ちよだ (@ちよだプラットフォームスクウェア)

 

2020年も、よろしくお願いいたします

2020年になりました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
今年の冬は雪が少なく、過ごしやすい年明けになりましたが、やはり長野県の朝は寒いです。

昨年は、9月に好天に恵まれ、非常によいブドウが収穫できました。2019ヴィンテージのワインは大きな期待が持てそうです。また、新たに造成された東御市・御堂(みどう)地区のワインブドウ団地にて3ヘクタール、植栽を開始しました。
一方、周辺では台風による大きな自然災害もありました。地球温暖化の影響か、年々、気候が激しくなってきていますので、日頃の備えがこれまで以上に重要だと感じています。

東御市内ではワイナリーの数が10軒になりました。また、千曲川ワインバレー、長野県全体でもワイナリーやヴィンヤードの急増は続いています。ワイナリーが増えることにより、相乗効果で世間の注目を集めるようになりますし、ワインに関わる産業、たとえば飲食業や観光業でも新たな動きが生まれつつあります。
ただ、数が増えることで、各々のワイナリーが注目を集めることは難しくなっているのも確かです。だからこそ、ブドウやワインの質を高める努力を様々な側面から着実に進め、より魅力ある産地として発展していくこと、地域のワイナリーが協力して日本全国へ、そして世界へアピールしていくことが、ますます重要になってくると考えています。日本で消費されるワインのうち、日本ワイン(日本国内で栽培されたブドウを100%使用して日本国内で醸造されたワイン)の占める割合はわずか5%程度ですから、まだまだ大きな市場開拓の余地があります。

今年、ヴィラデストでは、東御市・八重原(やえはら)地区で2015年に始めた畑のメルローだけでつくったワインを、ファーストリリースします。八重原地区は非常に細かい粘土質土壌で、味の濃いお米や野菜がとれることで有名です。この畑でとれたメルローの赤ワインも、若い樹ながら将来に大きな期待が持てる、味わい深いワインになりました。
また、2018年9月の長雨の影響により発生したシャルドネの貴腐ブドウを使用した、ヴィラデスト初の貴腐ワインをリリースします。本格的な極甘口の味わいにご期待ください!
*いずれのワインも、春ごろの発売を予定しています。

「シャトー・メルシャン 椀子ワイナリー」お披露目会に参加しました

先日、今年9月に開業した「シャトー・メルシャン 椀子ワイナリー」のワイナリー関係者向けお披露目会に参加させていただきました。
ワイナリー関係者は、秋は収穫・仕込みで忙しいからということで、少し落ち着いたこの時期に開催されたそうです。

広大なブドウ畑の中の見晴らしのいい高台に立つ、真っ白な美しいワイナリー。工場内はすべて窓越しに見えるようになっていて、ブドウ畑からワインづくりまでの過程が公開され、そこでできたワインをブドウ畑を見ながら味わうことができます。

 

メルシャンが上田市(旧丸子町)の陣場大地にワインブドウの苗を植え付けたのは、2003年、まさにヴィラデストワイナリーが開業した年です。
当時、植樹祭が行われて、私も玉村のお付きで行ったことを憶えています。
今では本州では最大と思われる約20ヘクタールの壮観なブドウ畑が広がります。昨年までは収穫されたブドウはすべて山梨県に運ばれてワインになっていました。ブドウ栽培はもちろん、ワインづくりにおいても、醸造時期の外気温などがワインの質に大きな影響を与えますので、今年からは本当の意味で、椀子(マリコ)のテロワールを反映したワインが生み出されてくるのでしょう。

また、メルシャンのワイナリーが近くにできたことにより、優秀な技術者との情報交換や交流がさらに活発になりそうですし、この地域を訪れる人も増加するでしょう。千曲川ワインバレーのレベルアップにもきっとつながるだろうと、期待しています。

収穫、仕込みも終盤です

10月21日にタザワメルロー畑の収穫が終わり、あと少量のカベルネを残すのみとなりました。

 

今年は、9月からの好天で一気にブドウの糖度が上昇し、非常に健全で質の高いブドウが収穫できました。10月中旬の台風19号の影響が心配されましたが、ヴィラデストは特に被害なく、収穫・仕込みも終盤を迎えることができました。多くの皆様にご心配いただき、ありがとうございました。

 

 

しばらくはワイナリー内でワインの発酵や赤ワインのプレス作業、ブランデー(ヴィナッチャ)の蒸留など、まだ気を抜くことはできませんが、約1か月半続いた収穫が終わると一息つくことができそうです。

今年も多くの皆さんに収獲ボランティアで助けていただきました。2019ヴィンテージは大いに期待できそうです!